【Review】Black Rooster Audio「The ALL Bundle」レビュー(全製品を網羅したレビュー・おすすめのプラグイン・競合製品との比較・評価)


【Review】Black Rooster Audio「The ALL Bundle」レビュー(全製品を網羅したレビュー・おすすめのプラグイン・評価)


製品情報



クラシックミックスチェーン
クラシックなスタジオ機器のビンテージ風と、現代の簡単に適用できるデジタル処理を組み合わせたこのバンドルは、毎日のミキシングに最適なツールのチェーンです。必要なものがすべてわずかなコストで揃います。

特徴
本格的な回路エミュレーション

Black Rooster Audio のリアルタイム SPICE タイプ コンポーネント ベースの回路シミュレーション アプローチにより、アナログのサウンドと感触をあらゆるニュアンスで忠実にキャプチャすることができます。オーディオトランス、真空管ステージ、パッシブフィルターネットワークなど、オリジナル回路の重要な部分はすべて忠実にモデル化されています。

SSE2 に最適化されたコード

DSP 操作は、SSE2 命令セットを使用してパイプライン化されます。これにより、非常に複雑な計算にもかかわらず、可能な限り最高のパフォーマンスの操作が保証されます。

自動調整されたオーバーサンプリングによりオーディオの透明性を最大化

エイリアシング アーティファクトは、低レイテンシの線形位相ドルフチェビシェフ ポリフェーズ設計を使用して効率的に減衰されます。オーバーサンプリングはセッションのサンプル レートに自動的に調整され、可能な限り最も透明なサウンドを提供しながら貴重な CPU パワーを節約します。

HighDPI / Retina のサポート

すべてのプラグインは Mac OSX および Windows での高ピクセル密度をサポートし、高 DPI ディスプレイで最も楽しいユーザー エクスペリエンスを提供します。Windows で作業している場合は、マニュアルを参照して DAW が HighDPI 対応かどうかを確認してください。
その他詳細は製品ページを参照してみてください。

Black Rooster Audio「The ALL Bundle」の収録製品

全製品のリストは以下の通りになります。(公式サイトより、いくつか無料製品も含まれているようです、有償製品としては合計22製品。)
  • VLA-2A
  • VLA-3A
  • THE CANARY
  • CYPRESS TT-15
  • VHL-3C
  • VEQ-5
  • BLUEASH SC-5
  • BLACKASH SC-5
  • MAGNETITE
  • VPRE-73
  • VEQ-1P
  • EDELWEISS`72
  • VLA-FET
  • KH-COMP1
  • RO-140
  • KH-EQ1
  • RO-SPR
  • OMNITEC-67A
  • VPRE-73 HALLOWEEN EDITION
  • VLA-2A MARK II
  • RO-GOLD
  • TD-201
  • GA-GT2
  • OMNITEC-436C

Black Rooster Audioでおすすめのプラグイン

最初に断っておくとニーズは人に依りけりなので万人に合うもの等ありません。しかしながら、ここでは製品の独自性や代替えの利かなさ、差別化といった観点から製品を評価した上でより多くの人とって注目される可能性のある製品をピックアップしてみます。(ここで挙げてない製品との優劣ではありません。)

 Black Rooster Audioの製品の多くはエミュレーションエフェクトプラグインです。つまり、オリジナルのモデルが存在し、それをモデリングしている製品が数多く用意されています。一方で、完全オリジナルの製品もあります。その中で注目してみたいのがOMNITECシリーズ。これはオリジナルが希少でエミュレーションも少ないプラグインです。実機特有の個性的なサウンドが得られるという点でチェックの優先度が高い人もいるでしょう。また、LAシリーズも他の競合他社エミュレーションプラグインと性格が異なる印象を受けましたので見てみるのも良いかもしれません。またリバーブ系プラグインエミュレーションは非常にサウンドの濁りが少なくツールとしても優秀かもしれません。Magnetiteは定番として人気があったりします。


Black Rooster Audioの全製品を網羅したレビュー

ここでは全製品を記載するのではなく、特に論じる必要がある、注目に値する製品についてピックアップしていきます。広く浅くではなくということで。(選定の基準は製品の優劣とは関係ありません)ここでピックアップしたのは何か言わずにはいられなくなった製品ということです。(そのため、安定の及第点の製品がここには載っていない可能性もあります。)また、後に気づきがあれば随時その他の製品の内容も追加していくかもしれません。

 OmniTec-436Cのレビュー

Black Rooster Audio プラグインの最新のビンテージ vari-mu コンプレッサーは、ダイナミック レンジとビンテージの暖かさで有名な伝説の Altec 436C チューブ コンプレッサーからインスピレーションを得ています。1950 年代に初めて導入された 436C は、その多彩なパラメータ設定とその高度な音楽的出力により、すぐにトップ プロデューサーに受け入れられました。この象徴的なコンプレッサーの革新的な回路と独特のサウンドは、Fairchild や Manley の vari-mu ユニットなど、他の有名なコンプレッサーにインスピレーションを与えました。


この象徴的なギアには、アビー ロード スタジオの伝説的プロデューサー、ジェフ エメリックなど、印象的なクレジットが数多く記載されています。彼は Altec 436C を利用して、ビートルズ、ハーブ アルバート、フランク シナトラなどの多くの非常に重要なレコーディングの基礎を築きました。その後、436C は米国とヨーロッパのポップ ミュージック スタジオでの地位を確立しました。OmniTec-436C プラグインは、このビンテージ コンプレッサーの最高の機能を完璧にエミュレートしながら、当社の特徴的な Black Rooster Audio のツイストで最新化しています。追加のサイドチェーンフィルター、デュアルモノラル/ステレオリンク、リミットモード、SCリッスンモードを提供します。

チューブベースのモデリングを備えた OmniTec-436C は、ミックスを圧倒することなく、スムーズでまろやかなトーンをトラックにもたらす、非常に音楽的な品質を備えています。その代わりに、適切な量の凝集性を提供し、録音に完璧な量の「接着剤」を与えます。OmniTec-436C は、ミックスに甘美なヴィンテージトーンを加えるのに最適なツールです。ボーカル、ストリングス、ブラス、さらにはシンセサイザーで試して、時の試練に耐えるヴィンテージの品質を体験してください。

特徴
  • OmniTec-436C プラグインは、ビンテージ vari-mu コンプレッサーの回路と特性を正確にエミュレートし、エンジニアやミュージシャンが切望する暖かく自然なアナログ サウンドを提供します。
  • OmniTec-436C デジタル vari-mu コンプレッサー プラグインには強力な 2 バンド サイドチェーン フィルターが装備されており、オーディオ信号の圧縮動作を完全に制御して真にプロフェッショナルなサウンドを実現します。
  • OmniTec-436C デジタル vari-mu コンプレッサー プラグインを使用すると、高度なステレオ リンクと並列圧縮機能により、まとまりのあるダイナミックなステレオ ミックスを簡単に実現でき、サウンドのステレオ イメージと密度を比類のないコントロールで実現できます。
 Altec 436C チューブ コンプレッサーのエミュレーション

このエミュレーションは比較的最近の製品。 Altec 436C という、Fairchild や Manley の vari-mu ユニットよりさらに前の1950年代のチューブコンプレッサーで非常に希少性が高く、エミュレーションとしてもなかなかでていない貴重な製品といえます。サイドチェーン処理やパラレルコンプレッション等拡張されているところもポイントですが、なんといってもコンプレッションの特性が印象的。少ないゲインリダクションでは非常にざらつきのある自然なコンプレッションが得られますが、ハードコンプレッションにすると強烈な圧縮によって非常にパンチのあるタイトなサウンドになります。(これはオリジナルの特性に依っているのでしょうが、他のBlack Rooster Audio製品のコンプと比較して強烈な圧縮と効果が特徴的。)Fairchild や Manleyとも雰囲気が異なるワイルドなコンプレッサーで、そのため、ロックのドラムや強烈なサウンドを創り上げる際にチェックしておきたい製品かもしれませんね。Omniシリーズはその希少性もありエミュレーションを既にいくつか所有している人こそチェックしておきたい製品だと思います。



TD-201のレビュー




Roland Space Echo RE-201 はブランドのベストセラーとなりました。それはさらに進化し、今日でも音楽制作やサウンドデザインに広く使用されているさまざまなディレイエフェクトに進化しました。RE-201誕生以来、変わらぬ名声を誇るディレイサウンド。多くのテープディレイ愛好家にとって、伝説的なヴィンテージユニットのサウンドに勝るものはありません。それでも、使用に時間がかかり、アクセスが難しいことは言うまでもなく、多くの人がその予測不可能性に苦労しています。これが、TD-201 を作成した理由です。TD-201 は、クラシックのビンテージ特性をすべて提供するとともに、使いやすさを最大限に高めるための無数のカスタマイズ オプションを提供する、高度にカスタマイズ可能な同梱テープ ディレイです。
TD-201は非常に有名なRoland Space Echo RE-201 のエミュレーション。ディレイエフェクトプラグインです。設定にもよるかもしれませんが、全体的にあっさりめのディレイをかけやすいように感じます。というのもTD-201は通常の同エミュレーションプラグインと比較してパラメータオプションが無数に用意されています。そのため、非常に細かなところまでディレイをカスタマイズできるようになっています。コントロールが効くといいますか。好みというのもありますが、解像度がさほど低くならず、厚ぼったくなくディレイが欲しい場合には選択肢の一つとなりそうです。

Black Rooster Audio「VLA-3A 」のレビュー


ビンテージレベリングアンプ



Black Rooster Audio は、70 年代のアナログ兄弟の最も本格的なネイティブ エミュレーションの 1 つである VLA-3A プラグインを提供できることを誇りに思っています。これはボーカル用の重要なコンプレッサーですが、パーカッシブな素材のアンビエンスを引き出し、ミックスに接着剤を加えるのにも非常にうまく機能します。
VLA-3Aは、Teletronix LA-3Aに基づくエミュレーションプラグイン。ソリッドステートオプティカルコンプレッサーの非常に有名なモデルでWaves、Universal Audio等数多くのメーカーによるエミュレーションもリリースされています。実機同様非常にシンプルなつくりになっており、ゲインリダクションのためのノブとLimit/Compの切り替え等、ハードウェアによって用意されたスレッショルドに当てるタイプのコンプレッサーで非常に操作はシンプルです。評価をする際にやはり比較が重要かもしれません。複数のTeletronix LA-3Aエミュレーションと比較した際の概略的な特徴としては、VLA-3Aは非常に味付けが滑らかで自然でなだらかにかかるのが特徴で、良い意味でさりげなくかかります。キャラクター付与を前面化する以外の用途でも非常に使いやさを感じられるところであり、コンプレッション時にサウンドもタイトにまとまるかのような特性があります。コンプレッサーとしてのクリーンという訳でもないですが、マイルドに味付けも加わる印象。UADのLA-3Aも非常に原音に近いニュアンスが残りますが明らかに砂っぽい細かなざらつきが加わります。また、有名どころではCLA-3Aがかなりアグレッシブにかかる印象があります。これはロック等のスタイルにはなかなか重宝しそうです。

VLA-2A Mark II 



Black Rooster Audio は、1960 年代後半の光電子コンプレッサーの世界最高のエミュレーションである VLA-2A Mark II を発表できることを誇りに思っています。何時間ものハードワーク、計算、マッチングを経て、最終的に VLA-2A Mark II プラグインが完成しました。彼らは、今日までこのユニットの最も本格的なネイティブ エミュレーションの設計に、知識、エンジニアリング スキル、そして心をすべて注ぎ込んできました。彼らは VLA-2A Mark II をドラムで使用するのが大好きですが、ベースやボーカルでも非常に優れたパフォーマンスを発揮し、コンプレッションを慎重に調整することで、信号を輝かせてミックスに溶け込ませることができます。
Teletronix LA-2Aに基づくオプティカルコンプレッサーエミュレーションプラグイン。通常の忠実なエミュレーションプラグインとは異なり、いくつかのオプションが用意されているのが特徴。Emphasisでは、高周波に対する感度)を制御するシェルビングフィルターフィルターによりサイドチェーン信号の低周波成分が減少しローエンドの感度が低くなり、高周波に対してより敏感になる圧縮が得られます。また、セルセレクターのバリエーションによりソフトニーからハードニーまでの選択肢が用意されています。サイドチェーンも。追加の選択肢だけでも非常に重要なオプションといえます。肝心のサウンドは癖がなく非常にスムーズでキャラクター付けを最小限で加えたいときなどに良い選択肢となりえるかと思います。有名どころのFETのエミュレーションVLA-FETもありますが、機能の拡張性といった観点も含めるとVLA-2A Mark IIにより特性にも顕著なオリジナリティがありより印象的なエミュレーションだと感じます。


VPRE-73

ヴィンテージプリアンプエミュレーション



VPRE-73 プラグインは、レコーディング スタジオの歴史の中で最もクラシックなプリアンプの 1 つからインスピレーションを受けています。Black Rooster Audio は、オリジナルのプロセッサーを合理化しながら、ディスクリート プリアンプ回路とオーディオ トランスの本格的なエミュレーションを提供するために最善を尽くしましたが、有名なハイシェルフ フィルター帯域も維持しました。VPRE-73 は、ローエンドの魔法、ハイエンドの輝き、そしてユニークでクラシックな雰囲気を再現するために必要な適切な量の THD を提供します。

非常にシンプルなプリアンプのエミュレーションプラグイン。Gainはアナログ音声信号がプリアンプによってどれくらい増幅するか量をコントロールし、トリムでデジタル処理で音量調整。ハイパス、極性、ハイシェルフと大変シンプルです。Gainやハイシェルフであげると割と露骨にざらざらとした質感が加わるので、ファンクやロック等のスタイル等を中心にサウンドに適性ありかもしれません。なお非常に典型的なサウンドなので、競合製品もあるかもしれませんが、安定の量サウンドなのでお好みでといったところかもしれません。

Magnetite



本物のテープの暖かさ
Magnetite は、Black Rooster Audio による磁気テープ レコーダーのサウンドへのオマージュです。録音ゲインノブを使用して必要な量の飽和と暖かさを調整するだけで、Magnetite が探しているアナログテープサウンドをミックスに追加します。巨大なドラム、歪んだループ、飽和したボーカルなど、何でもいいので、Magnetite があなたのトラックに新しい命を吹き込みましょう。彼らは、あたかも信号がテープに記録されているかのように、Magnetite をチェーンの最初のインサートとして使用することを推奨しています。もちろん、創造的な効果を求める場合は、別の場所に配置することもできます。

テープシミュレーションプラグイン。モデルは特に明かされているという訳でもなさそうです。Black Rooster Audioの製品の中でも非常に人気で有名な製品のひとつです。こちらはより詳細な製品レビューをこちらでチェックしてみてください。

VEQ-5 

ビンテージ中音域イコライザー


VEQ-5 は、スタジオの歴史の中で最も有名で有名なイコライザーの 1 つからインスピレーションを受けており、200Hz から 7kHz までのパワーレンジ周波数に焦点を当て、ボーカルをクリーンアップし、甘くすることを目的としています。しかし、ギターや鍵盤でも素晴らしい仕事をします。
VEQ-5 はPultec EQ のMEQ-5エミュレーションプラグイン。実機のパラメータほぼ同様のノブが用意されています。他のプラグインと比較してみると非常にさり気のない(過度な味付けやアナログライクなハーモニクス等が加わることなく)滑らかなEQカーブが特徴的。音像も大きな変更が見られずに非常に滑らかにかかる印象です。Universal AudioのPultec MEQ-5がEQカーブにおいてピークが見られるのとは対照的といえます。WavesのPuigteqもデフォルトのEQカーブは非常にVEQと似ていますが、それぞれのパラメータコントロールの際に結構劇的にエフェクトがかかる印象です。(だたし非常に魅力的でもあるので捨てがたいところでもあります。)

まとめ

Black Rooster Audioによりリリースされている製品を全て俯瞰して言えるのは他のエミュレーションをリリースしているメーカーと比較した際に全体的に非常にサウンドが癖のあるサウンドや挙動を感じる製品が少なく、EQであれば非常に滑らかなEQカーブを描くなど、非常に処理や味付けが滑らかです。(アンプは一方でアグレッシブなものもしっかりある印象。)上述の内容はとりわけEQやコンプ、リバーブに顕著な特徴ともいえますが、そのため、どちらかというとサウンドに耳で聴いてわかるような味付けを加えるというよりはナチュラルな処理を行いたい際に非常に重宝するプラグインであるように感じられます。