【Review】sonible「learn:bundle」レビュー(EQ、コンプレッサー、リミッター、リバーブ、アンマスキングプラグインを収録したAIプラグインバンドル・機能と使い方・評価・セール情報)


メーカーによる一次情報

learn:bundleには、EQ、コンプレッション、リミッター、リバーブ、マスキングの理解を助ける、直感的に操作できるAI搭載プラグインが5つ含まれています。初心者の方でも、ワークフローをスピードアップさせたい方でも、このバンドルに含まれる各プラグインは、AIによる処理能力、直感的なインターフェース、そして役立つビジュアルフィードバックを提供します。音色バランスやダイナミクスの調整から、空間エフェクトの調整、マスキングの除去まで、learn:bundleはより良いミックスを実現するための理想的なパートナーです。

learn:EQ


効果的な音色形成を指導しサポートするように設計された AI 搭載イコライザー。

特徴
AI分析に基づく自動EQカーブ
直感的なサウンドシェーピングのためのトーンスライダー
補助表示と詳細表示 – 教育と実用のために設計されています

learn:comp



ミキシング中にコンプレッションを学習できる直感的なコンプレッサー。

特徴
AIを活用した圧縮
ダイナミックレンジの視覚的ガイダンス
補助表示と詳細表示 - 教育と実用のために設計されています

learn:limit 

音量モニタリングと教育的ヒントを内蔵したインテリジェントなリミッター。

特徴
AIベースのパラメータ化
インテリジェントなラウドネスモニタリング
補助表示と詳細表示 - 教育と実用のために設計されています

learn:reverb 


創造性と明瞭さの両方を実現するために設計された AI 駆動型リバーブ プラグイン。

特徴
ソースアダプティブリバーブ
自動リバーブパラメータ化
補助表示と詳細表示 - 教育と実用のために設計されています

learn:mask


ミックス内のマスキングの問題を解決するためのインテリジェントなスペクトル ダッキング ツール。

特徴
AI誘導スペクトルダッキング
リアルタイムスペクトログラムフィードバック
周波数の境界と精度制御

  • ミキシングスキルの学習と向上のためのAI搭載プラグインの包括的なスイート
  • オールインワンのインテリジェントミキシングスイート - EQ、コンプレッサー、リミッター、リバーブ、アンマスキングツールが含まれています
  • AIを活用した処理 - オーディオに合わせて設定を自動的に調整し、それぞれの決定の背後にある理由を理解するのに役立ちます
  • 教育的で直感的なデザイン - より良いサウンドとミキシングの基礎のより深い理解を求める意欲的なミキサーに最適です。
詳しい製品規格などはsonible公式ページも確認してみてください。




sonibleのpure:、learn:、 smart:シリーズの違いについて

sonibleはAIを活用したプラグインシリーズとしてpure:, learn:, smart:の3種類のシリーズをリリースしています。その違いは恐らくこれは読者の多くが気になることかもしれません。公式サイトにはその開発コンセプトについて述べられています。

オーディオ制作は、初めてのミックスに挑戦する初心者から、厳しい納期に追われながら作業を進めるベテランのプロまで、多様な分野です。私たちは、それぞれのニーズに応える3つのプラグインラインを開発しました。
  • pure: 最小限のセットアップでインテリジェントな結果を求める、ペースの速いクリエイティブな人々。
  • learn: 素晴らしいサウンドを得ながらミキシング スキルを向上させたい初心者および学習者。
  • smart: 完全な柔軟性を備えた高度なツールを必要とする経験豊富なエンジニア。
ここまで引用

pure:, learn:, smart:に進むにしたがってカスタマイズできる機能の数が増えていきます。(注意して欲しいのは対応するプラグインごとに異なるパラメータが用意されているものがあるので単純に上位互換の関係ではないということです。)
pureはAIによる提案と1,2の調整で完結するワンノブに近い大変シンプルな設計。まさに時短に特化して設計されています。

Learnシリーズは初学者、教育者、DTM制作者向けに設計されているプラグインで、自分の設定が良いのか悪いのかフィードバックをしてくれるという点が最大の特徴。
Learnシリーズは、ミキシングスキルを向上させながら、素晴らしいサウンドを実現したいと考えているすべての方のために開発されました。学生、趣味で音楽制作に携わる方、音楽教育者など、どなたでも、Learnプラグインシリーズは、リアルタイムの視覚的フィードバック、ガイダンス、そして分かりやすくユーザーフレンドリーなインターフェースを備えたインテリジェントな処理を提供します。(中略)「この EQ バンドは何をするものなの?」や「どの程度の圧縮が過剰なの?」と疑問に思っている場合は、learn:bundle が最適です。

最適な対象:
オーディオ処理を理解したい初心者、学習者、教育者、ホームプロデューサー
ここまで引用

smartシリーズは一通りオーディオ処理に慣れていて精度を求めつつ、AIを活用する経験豊富なオーディオプロフェッショナル、エンジニア、プロデューサー向けに設計されています。

smartシリーズは、最大限の柔軟性と精度を提供します。自分の作業を理解しつつも、時間を節約し、意思決定を支援するインテリジェントなツールを求めるユーザーのために設計されています。プラグインはAIを活用して最適な設定を生成しますが、すべてのパラメータは手動で細かく調整できます。

ここまで引用 

また、公式の見解としては併用も推奨しています。

learn:EQ を使用してトーンシェーピングをより深く理解し、自信がついたら smart:EQ 4 に切り替えます。簡単なデモ制作には pure:limit を使用し、マスタリングには smart:limit を使用します。pure:verb を使用すると空間を素早く追加でき、より複雑なアレンジメント用にカスタマイズされたリバーブが必要な場合は smart:reverb 2 を使用します。

learn:bundleについて

learn:bundleにはlearn:EQ, learn:comp, learn:limit, learn:unmask, learn:reverbの5製品が収録されています。(単品販売もされています。)それぞれが独立したプラグインとなっています。ここではそれぞれのプラグインについて教育的観点についてもフォーカスしながら詳しく見ていきましょう。

learn:compのレビュー

まず、それぞれの製品の共通する特徴についてみていきましょう。楽器やスタイル(製品によってそのカテゴリーがあったりなかったりします。)ごとのアルゴリズムを選択し、オーディオを分析するとAIによりそれぞれのパラメータが自動的に設定されます。これは前述の2つのシリーズと共通する流れですね。これらのプラグインは基本的にAssisted(シンプルなパラメータのみ表示)とAdvanced(より細かいパラメータ制御やメーター等を表示)の2画面が用意されています。次にそれぞれの製品についてみていきましょう

learn:compはAIによるコンプレッサープラグイン。ギターや声など楽器ごとのプロファイルを設定して、オーディオを分析します。最適なコンプレッサー設定を提案します。
シンプルな画面にするとコンプレッションスタイルの設定(ソフト、ナチュラル、ハード。Advancedで確認するとニーやレシオ、スレッショルドなどのパラメータをオーディオに応じて適応的に3段階の設定に変えられるプリセットです。)とコンプレッション(スレッショルド)の少ないパラメータで操作可能。こちらのプラグインはオーディオ処理の良し悪しの判定機能は特にありません。オートゲイン機能がついています。


Advancedにすると、レシオ、スレッショルド、アタック、リリース、ニー、ドライウェットが核にできます。コンプレッサーに慣れている人にとってはおなじみでしょう。また、smart:comp 2の看板でもあったスペクトラルコンプレッションをワンボタンで設定できるオプションモードが用意されています。




ここまで効くと同社のリリースしているAI付きのコンプレッサーと非常に類似しています。どこがlearnかというと筆者にはソフト、ナチュラル、ハードのモードに教育性を感じますね。この3つのモードは単に絶対的な設定のプリセットではなくオーディオごとにカスタマイズされたパラメータを設定します。つまりどういうことかというと、学習させるオーディオごとに設定は異なり、このオーディオでのソフトのコンプレッションはどれくらいかという相対的な設定をプリセットとして瞬時に呼び出せるできるわけですね。ハードにコンプかけたい場合どれくらいまで設定すればよいのかという一つの指標が与えられるわけです。もちろんあくまでAIアルゴリズム依存ではあるので絶対的な判断というよりも一つの判断材料としての教材を提供してくれるわけです。(慣れない人はまず、そのように設定を試してから、その後自分の耳で納得のいく設定に微調整できるということです。)試行錯誤して設定していったパラメータの調整やオーディオ処理の過程は他のコンプレッサー処理の操作の際に活かすことも可能であり、シンプルですが、筆者としては一定の教育的価値を感じます。




learn:unmaskのレビュー

learn:unmaskはサイドチェイン信号によりダッキングをするアンマスキングプラグイン。AIによるプロファイルを取得するタイプのアンマスキングとしては新鮮で新しいプラグインかもしれません。操作としてはダッキングのスピードと、エフェクトの強度をlight balanced heavyから選択するというシンプルなもの。


ローとハイの周波数の限定ができます。
サイドチェイン信号とダッキングの信号を聴くことができます。視覚化するのでスペクトルグラムで被りの認識と理解が深まるということでしょうか。確かにサイドチェインによる案マスキングプラグインとしては非常にビジュアライズされているUIですので音とイメージを比較しながら余分な処理をしていないか確認しやすくなっているということは指摘できると思います。また、いくつかのオーディオで試してみると非常に自然なダッキング処理ができ、オーディオごとに最適なアルゴリズムが設定できるというのは貴重だと思います。

learn:reverbのレビュー

learn:reverbはAIによるリバーブプラグイン。AIのプロファイルはオーディオ全般の汎用設定の他、楽器がメインです。オーディオを学習させるとパラメータが設定されます。リバーブモードは3種類。こちらは内部設定によるものなのでフレーバーが3種類と考えてください。ナチュラルか人工的かバランス型かどれが合うか選べます。artificalが金属的な響きになるので非常に面白い。電子音楽にもうまくはまるサウンドになるので純粋にプラグインのエフェクトとしてみて魅力的。
基本画面はプリディレイ、リバーブ量と音源の位置とリバーブに関するステレオフィールドの操作。





詳細設定にすると、リバーブの明るさ暗さ、原音とリバーブ信号の被りを軽減するアンマスキング機能Clarity、モジュレーション、ベースのモノラル化、ハイパスといったオプション機能が表示されます。これらのパラメータはsmart:verb 2にも共通するものもありますね。Clarityが肝で、通常のダッキング以上に自然にリバーブの響きを抑制できるので良い印象。




学習要素としてはTempo Syncの表示機能も一つでしょうか。時間単位ではなくDAWのテンポにおける小節単位で表示できます。また、リバーブをリバースモードにしたり、創造的なリバーブエフェクトを作る上でも役立つリバーブ。



下記、smart:reverb 2と比較してみても非常に似た操作と使い勝手でプラグインとして学習面を考慮に入れず、純粋なプラグインとしてみても非常に有能なプラグインだと思います。(ちなみにroom, hallといったパラメータにあるようにsmart:reverb 2とはリバーブアルゴリズムが異なります。そのため、響きが異なります。パラメータの自由度としてはマルチバンド処理などsmart:reverb 2の方が複雑な処理ができる機能があったりするのですが、learn:reverbにのみプリディレイ設定があったりと完全な上位版と鳴っているわけでもないと思われます。複数のトラックのリバーブ信号の相互作用を反映するクロスチャンネル機能が搭載されています。)使ってみた印象だと自然な響きを追求する場合はsmart:reverb 2の方がより追い込める印象があります。learn:reverbは割と実際の響きとは独立して自由にリバーブが作れる印象で、これはこれで実用性を感じるところ。


learn:limitのレビュー


learn:limitはリミッタープラグイン。オーディオ分析の際に楽器やジャンルごとにプロファイルが用意されていてこのプラグインの場合リファレンスオーディオを読み込ませることができます。このプラグインはラウドネス、ダイナミクスレンジ、ピークの良し悪しの判定機能が備わっていてプロファイルごとにそれぞれ用意されています。画面左にランプが3つあり、問題のある場合は黄色で表示されます。オーディオ処理に対し、リアルタイムで判定してくれるので非常に便利。再測定も可能。電子音楽にしてはラウドネスが小さい、などがわかるわけです。
リミッティングモードはmodern natural hardの3種類これは内部設定なのでモードの切り替えのみの操作で自分で操作することはできません。リミッティングの状態がビジュアル化されるのでわかりやすいとも言えます。アタックリリースは一つのパラメータでfast, autoなどを設定可能。
リミッターの機能としてはゲイン操作とリミッティングレベルがもちろん備わっているわけですが、このプラグインの場合詳細設定を開くと非常に充実した追加機能が確認できます。
ベースをもちあげたり、サチュレーションを加えたり、エフェクトの処理の量を設定するという大変シンプルな設定。トランジェントの補正により、パンチを維持したり。レゾナンスサプレッサーも用意されています。それぞれ小さく処理が小型画面にビジュアル表示されそれぞれの操作が大画面のビジュアライザーに反映されるので非常にわかりやすい。


シンプルな画面表示にするとこのように。

smart:limitを見て比較していきましょう。リミッターはアタックリリースの設定ができます。オーディオ処理信号のデルタリスニング機能があります。ラウドネスメーターによる情報がより詳細になっていて、ストリーミング規格などに応じたラウドネス設定と比較することができます。

判定機能もあります。

比較してみると、learn:bundle製品の中ではlearnとsmartで機能の重なる部分が少なく大分異なる印象があります。ラウドネスの厳密な確認のためにはsmartの方が適正かもしれませんが、learnにはレゾナンスサプレッサーやトランジェント操作などオーディオ面での拡張機能があります。ラウドネスコントロールだけでなく、さらに機能が必要な方にはlearnの方が魅力的に映るかもしれませんね。

learn:eqのレビュー

楽器ごとにAI分析のプロファイルが用意されています。設定すると独自のEQプロファイルに基づくEQカーブを形成します。操作としてはsmartシリーズと同様に与えられたEQポイントを上下するシンプルな操作。持ち上げるとEQカーブの形状もそのおおまかな輪郭に従って変化します。シンプルな画面表示だとLow、High、そしてBody、Airなど周波数の区分や一般的な作用を表示したエリアごとに周波数をもちあげたり、下げたりするという操作で完結します。learnなのでこの形状を学習して他のEQでEQカーブを作る時の参考にしてね、ということだと思います。ダイナミックEQ機能も搭載。


先に取り上げたlearn:compと同様に三段階のカスタムプリセットが用意されています。warm, natural, brightとあり選択するとEQカーブのセッティングがプリセットに応じて変化するので音を変えたいときにどうすればよいか理解する上で役立つように設計されています。周波数帯域ごとのリスニング機能も搭載されています。






評価

学習や教育的側面の元で設計されたプラグインはさほど多くありません。多くの場合、時短、手軽、少ない操作という技術の習得を回避する製品が現代では主流です。一方、例えば、Audible Geniusの「Syntorial 2」は学習目的に設計されたシンセサイザーで、シンセサイザー自体としては大変シンプルな設計ですが(最近独立した製品としてリリースされたので一定の実用性も想定して設計されていますが明らかに学習コンテンツの方に重きが置かれています)、競合がないほどに充実した学習段階が設定されています。このプラグインは単に学習目的だけでなく実用性も重視されているプラグイン。学習という目的を気にせずに、通常のプラグインとして使用しても恩恵が得られるプラグインシリーズだと思います。smartシリーズと比較してlearnシリーズならではの機能が得られるプラグインとして特に筆者が注目しているのはlearn:limitとlearn:reverbですね。機能が充実しているだけでなく、他の多くのプラグインとは大きく異なるアプローチや設計面の工夫がみられると思います。また、learn:unmaskはプロファイルでオーディオの対象を絞ってダッキングをするというのがユニークで純粋なオーディオ処理としても恩恵が得られる製品だと思います。learn:compとlearn:eqはどちらかというと新設設計が表に出ている印象。smart:eqでおなじみのEQカーブのAIによるカスタマイズがユニークですが、通常のEQやコンプの習得にも結び付くようになっているため、内部処理以外の実際のユーザー操作としてはオーソドックスで意外にシンプルです。
あまり慣れていない人でも使いやすいプラグインとしてユーザーフレンドリーな側面が印象に残ります。ここまでの考察でおおよそ何を教えてくれるのかというのはおおよそ明らかになったかと思われます。総じてAIによる自動提案を活用しながらもAIに依存しないオーディオ処理の習得を上手い形で繋げているプラグインといえます。ある程度オーディオ処理に慣れている人にとっても処理がリアルタイムでビジュアライズされて再確認できるという点は新たな気づきを得られる可能性があるかもしれません。
処理を丸投げしたい方はpureシリーズが適切だと思いますが、オーディオ処理を身に着けたい人や自分の処理を見直したい人にとってもなかなか良い製品だと思います。



セール情報

発売を記念して割引セールが実施されています。公式ストアでは無料試用もできるので確認してみてください。


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