【Review】Three-Body Technology「Cenozoix Compressor」レビュー(コンプレッサープラグイン、機能と使い方・評価・セール情報)
メーカーによる一次情報
コンプレッサープラグインの新時代を体験してください
Three-Body Technology Cenozoix Compressorは、恐竜絶滅後、哺乳類が飛躍的に進化した新生代にちなんで名付けられました。革新的な機能と豊富な機能を搭載したこのミキシング&マスタリングプラグインは、コンプレッサーの新時代を牽引する存在です。
12種類のクラシックコンプレッサーのサウンドを再現
Cenozoixは、「ドラム」、「ボーカル」、「バス」、「マスタリング」といった制作に不可欠な要素すべてに対応するコンプレッションアルゴリズムを搭載しています。さらに、「Black FET」、「Blue FET」、「Vintage Opto」、「Virtual-Mu」といったビンテージコンプレッサーのサウンドを再現するアルゴリズムも搭載し、実用性と汎用性の完璧なバランスを実現しています。このコンプレッサープラグインは、タイトでモダンなサウンドから重厚なビンテージサウンドまで、あらゆるコンプレッションニーズに対応します。
ミックスに歪みのないコンプレッションを適用します
超高速のアタックとリリースタイムは、既存のコンプレッサーを使用すると不要な歪みを引き起こす可能性があります。Cenozoix Compressorはワープメカニズムを採用することでこうした歪み効果を回避するため、ピークコンプレッションやサイドチェーンコンプレッションに最適です。スネアの鋭いトランジェントを抑えたり、キックに合わせて躍動感のあるベースラインを作成したりするのに活用できます。
ADAAを使用してCPU負荷を低くしてエイリアシングを軽減する
高周波歪みを防ぐことを目的とした従来のアンチエイリアシング手法は、CPU負荷の高いオーバーサンプリングに依存しています。ADAA(アンチデリバティブ・アンチエイリアシング)は、Native Instruments社が開発したオーディオ処理技術で、元々はウェーブシェイパーに使用されていました。ADAAはオーバーサンプリングに頼るのではなく、高度な数学的手法を用いてCPU負荷を高くすることなくエイリアシングを低減します。Cenozoix Compressorは、ADAAを搭載した最初のコンプレッサープラグインです。
自然で応答性の高いピーク圧縮を実現
多くのコンプレッサーは静的なリリースタイムを採用しており、短いトランジェントか長いトランジェントのいずれかに対応していますが、両方に対応しているわけではありません。Cenozoix Compressorのピーククレスト機能は、入力信号のトランジェントの特性に基づいてリリースタイムを動的に調整し、ダイナミックピークを自然かつレスポンシブにコントロールします。そのため、ボーカル、ギター、ドラム、ステレオバスなど、複雑な信号を扱う際に最適に機能します。
圧縮エンベロープを細かくコントロール
Cenozoix Compressorプラグインは、素早いトランジェントレスポンスを実現するピーク検出器と、スムーズな圧縮を実現するRMS検出器を搭載しています。これらの検出器を並列で使用することで、それぞれの長所を融合し、複雑なオーディオ素材に適した、素早いレスポンスと安定した圧縮を実現します。また、個々のトラック要素に最適な、純粋なピークまたはRMSベースの検出を選択することもできます。
特徴
クラシックなコンプレッサーのサウンドを再現する12種類の圧縮アルゴリズム
一般的なユースケース向けの12の圧縮アルゴリズム
歪みのない圧縮
アンチデリバティブ アンチエイリアス (ADAA)
デュアルピークとRMS検出
動的に調整されるリリース時間
奇数高調波と偶数高調波の発生
その他詳細は製品ページも確認してみてください。
機能と使い方
Three-Body Technology「Cenozoix Compressor」はマスタリングにも対応したコンプレッサープラグインです。このコンプレッサープラグインをカテゴライズするのは少し難しいかもしれません。上記のディスクリプションを一見しただけではモデリング系のようにみえるかもしれません。
確かにコンプレッションスタイルとしてはヴィンテージコンプレッサーのモデルをエミュレートした挙動を再現するモードが12種類用意されています。しかし、単にモデリングすることに主眼が置かれているわけではなく、むしろ先端技術に支えられた一般的な多くのコンプレッサーには備わっていない機能による精密な制御とオーディオ処理のカスタマイズ性が光るプラグイン。まず、通常のコンプレッサープラグインと同様の基本的なところから見ていきましょう。ノブがやたらと多いので一瞬とっつきにくい印象を受けるかもしれませんが、オプション機能がたくさんあると考えると理解がしやすい。スレッショルドのノブはおなじみですが、わかりやすいことに入力信号のレベルがノブでメーターとして表示されるのでスレッショルドにどれくらい、どのタイミングでかかっているのか一目でわかります。下のリッスンボタンでスレッショルドに引っかかって実際にゲインリダクションされる信号だけを聴くことも可能。波形にリダクションされた量が黄色で表示されるのは多くのプラグインと共通する点です。また、ニーもリアルタイムで入力信号の量が折れ線に表示されるのでどれくらいの傾きにすべきか見当がつけやすいかもしれませんね。地味に右端のグラフも入力量をイメージしやすい。レシオも通常通りの操作です。
ここから面白くなってくるところですが、まず、コンプレッションのための信号検出をPeakとRMSモードを切り替えるだけでなくブレンドできます。また、理論的にはより挙動の早いフィードフォワード/フィードバックの2種類のコンプレッサーの方式の特性をブレンドも可能。
また、コンプレッションの際に生じる倍音も偶数/奇数の量を調整することができます。
クランプはやや見慣れないパラメーターかと思います。これは簡単に言うと再圧縮機能。アタックタイムを遅く設定した時に漏れ出したトランジェントをターゲットにして再圧縮できます。これはよくアタックの遅いコンプレッション+後段にアタックの早いコンプレッションの二段構えで処理することもあるわけですが、これがこのノブの量を調整することでできるわけです。
De-ClickというとRXでおなじみのノイズリダクション系かと錯覚しそうになりますが、別物です。これは鋭いパーカッシブな素材を圧縮する際に超高速トランジェントによるクリックを圧縮しきれない時に圧縮するためのオプション。これにより「ノイズ」に聞こえるパーカッションのクリックを和らげることができます。仕組みとしてはクリックを検出し、特殊なオーバードライブエフェクトに送りクリック音のトランジェント量をオーバードライブ歪みの量に変換します。これによりトランジェントを維持することができるというわけですね。そのため、パーカッシブな素材以外では(ストリングスなど)基本使うことがありません。
12種類のコンプレッサーモードの画面。非常にわかりやすいUIで選択画面が広がるので操作もしやすく、この手のプラグインとしては使いやすい。これも評価に値します。クリーン、ラウド、マスタリング、プラック、ドラム、ボーカルなど用途が表示されているのも良し。
評価
この手のプラグインでは非常に優秀だが、セッティングの追い込みに手間がかかるという製品もよく見かけるところですが、非常に無駄のない設計でむしろ一般的なデジタルコンプレッサーの中でも使いやすさすら感じさせるプラグインだと思います。スレッショルドも入力信号のメーターを見ながらダイヤルを合わせることができ、Listen機能によって実際の処理の状態を随時チェックすることができ、アタックリリースの適切なタイミングの調整はもちろん、ゲインリダクションの設定不良による潰しすぎといった問題も対応するすることができます。また、アルゴリズムはいわゆる既存のヴィンテージコンプレッサーのモデルだけでなく楽器ごとに最適化されたカスタム設定も用意されていて、ワンボタンで変更できるのでライトに使われる方でもわかりやすくさほど迷うことがありません。また、コンプレッサーの倍音やオーバードライブといった色付けについても非常に柔軟にカスタマイズできるのは通常のモデリングコンプレッサーとの違いでもあります。細かい所に手が届くといったところで、コンプレッサーの動作を妥協なく、それでいて操作性やミキシングやマスタリングの工程の中に組み入れる際の汎用性実用性を決して犠牲にしていない。プロユースと思いがちですが、おそらくコンプレッサー普段から触っている人であれば多くの場合その使いやすさを実感できるなかなか完成度の高いプラグインだと思います。
セール情報
Plugin Allianceでライセンスが管理されているプラグインということもあり、セールの頻度はさほど少ないというわけでもないようです。割引率が固定されるメーカーではないので定期的にチェックしてみてください。