【Review】FrozenPlain「Cinematic Atmosphere Toolkit」レビュー(サンプルベースのシンセサイザーバンドル・FrozenPlainのサンプルライブラリのためのエンジンMirageの機能と使い方・評価・セール情報)
【Review】FrozenPlain「Cinematic Atmosphere Toolkit」(サンプルベースのシンセサイザーバンドル・機能と使い方・評価・セール情報)
製品情報
雰囲気、ホラー、音響効果のための包括的なツールキット。6つのサンプルライブラリに788のサウンド。サンプルベースのシンセ VST/AU、Mirage を搭載。楽器サンプル、雰囲気、サウンド デザインを含むこの膨大なサンプル ライブラリ コレクションを使用して、映画音楽を別のレベルに引き上げます。すべては FrozenPlain のサンプルベースのシンセ、Mirage (VST/AU を無料で含む) 内でホストされており、優れたアクセスとサウンドのコントロールを提供します。
飛び降り恐怖、不気味な楽器演奏、不気味な雰囲気を含むホラー スコアを作成します。夢のような雰囲気でリスナーを別世界の世界へ連れて行きます。ディストピアの設定に合わせて音の背景をデザインします。あるいは、歪んだ SF アクションエフェクトを作成することもできます。
- Abstract Energy – chaotic digital sound-design
- Paranormal – horror scares, ghostly vocals and eerie textures
- Scare Tactics – frightful atmosphere design
- Dreamstates – dreamy and nightmarish atmospheres
- Signal Interference – noise soundscapes
- Feedback Loops – hard-hitting feedback FX and noise textures
Abstract Energy
カオスなデジタルサウンドデザイン
デジタルカオス、乱気流、サイバーサウンドエフェクト。Abstract Energy には、ロボット機械やディストピア産業など、SF やホラー向けの豊かな抽象的なテクスチャ/雰囲気やサウンドエフェクトをデザインするために使用できる、主に無調サウンドとワンショットが含まれています。合計で 60 個の「オシレーター」と 50 個のすぐに使えるプリセットがあります。
Feedback Loop
強烈なフィードバックFXとノイズテクスチャ
ディストーション、フィードバック、ノイズ。次の音楽制作に、荒々しく残忍な要素を加えましょう。フィードバック ループには、残忍なフィードバック ヒットや FX から、雰囲気のあるノイズ テクスチャまで、あらゆるものが含まれています。この変形可能なサウンド ライブラリは、未来のテクノロジー サウンド、ホラーな雰囲気、破損したオーディオ フロー、さらには強力なディストーションによる恐怖にも最適です。合計で 200 個のサンプルと 50 個のプリセットが含まれています。
Signal Interference
ノイズサウンドスケープ
長いハム音、バズ音、静的ノイズのサンプル ライブラリである Signal Interference を使用して、豊かな音響環境を作成します。このサウンド デザイン ライブラリは、SF、ディストピア、インダストリアル環境のサウンドスケープをデザインするのに最適です。また、サウンド エフェクトや雰囲気のある音楽など、他の楽器とレイヤー化するのに優れています。Signal Interference を構成するサンプルのほとんどは無調ですが、音楽のピッチに調整された半調のサウンドもあり、魅力的で美しいパッドを作成するために使用できます。独自のパッチを作成するために使用できる 40 の「サステイン」サンプルに基づいています。50 の制作準備が整ったプリセットも含まれています。
Dreamstates
夢のような悪夢のような雰囲気
Mirage のアンビエント サンプル ライブラリ Dreamstates で、別世界の夢のような雰囲気を作りましょう。このライブラリには、引き伸ばされたノイズの帯、ぼんやりとした色あせたメロディ、緊張感を誘う深いドローン、ユニークなトランジション、Lo-Fi トーンなどのサウンドを含む、マルチトーン (コード) とシングルトーンの両方の 120 個のサンプルが含まれています。さらに、Mirage のランダム化機能によってさらに演奏しやすくなった、すぐに制作に使用できる 50 個のプリセットがあります。Dreamstates は、夢のシーケンスやフラッシュバック シーンのスコアリングに最適で、あらゆるジャンルの音楽に夢のような不思議な感覚を加えるのに最適です。
Scare Tactics
恐ろしい雰囲気のデザイン
Scare Tactics は、不気味な無調テクスチャ、威嚇的なドローン、抽象的なヒット、奇妙な楽器、不気味なトランジションのコレクションです。暗い雰囲気、飛び上がるような恐怖、不吉な存在感に満ちた、説得力のある不気味なホラーシーンを構築するために必要なすべての要素を提供します。合計で 200 個の「オシレーター」と 50 個の制作準備が整ったプリセットがあります。
Paranormal
恐怖の恐怖、幽霊のような声、不気味な質感
Paranormal で、恐怖、不安、絶望、緊張感をホラー作品に注入しましょう。幽霊のようなサウンド効果、不吉な雰囲気、驚愕の衝撃、抽象的なパーカッシブ パターンを簡単に作成できます。ブラウザーから、または多数のランダム化オプションのいずれかを使用してロードできる、制作にすぐに使用できる 50 個のプリセットが含まれており、思いがけないインスピレーションに最適です。
要件
Cinematic Atmosphere Toolkit は、プロデューサー、作曲家、ミュージシャン、サウンド デザイナーが可能な限り簡単に利用できるように設計されています。比較的新しいコンピューターでオーディオを制作している場合は、必要なものはすでに揃っているはずです。ただし、例外が 1 つあります。Cinematic Atmosphere Toolkit はまだ AAX プラグイン形式では利用できないため、Pro Tools では実行できません。具体的な要件は次のとおりです。
ウィンドウズ
Windows 7 以降が稼働しているコンピューター。Mirage は 32 ビットおよび 64 ビットのプラグインとして利用できます。ただし、インストーラーには 64 ビット マシンが必要です。事実上、すべての Windows マシンは 64 ビットです。
いずれかの VST2 プラグインを再生できるホスト。このようなホストの例としては、Cubase、Ableton Live、Studio One、Reaper、Reason、FL Studio などがあります。
マック
macOS 10.12 以降。Intel チップと M1 チップの両方がサポートされています (ユニバーサル バイナリ)。
AudioUnit v2 (AU) プラグインを再生できるホスト。このようなホストの例としては、Cubase、Ableton Live、Studio One、Reaper、Reason、FL Studio、Logic X、Garage Band などがあります。Logic 9 以前では AudioUnit v2 がサポートされていないため、この製品は動作しません。
その他詳しい製品内容については製品ページも併せて確認してみてください。
FrozenPlainのシンセエンジンMirageの機能と使い方
FrozenPlain「Cinematic Atmosphere Toolkit」は6種類のシンセライブラリが用意されたサンプルベースのシンセサイザーのセットです。FrozenPlainとGlitchedtonesのコラボレーションによって設計されたとのことです。(収録製品の単品購入もFrozenPlainストアで出来るようですが割高になります。)既存の6つのオーディオ ファイルパックのサンプル素材を元にバーチャルインストゥルメントとして設計されています。これらの6つのライブラリは単一のMirageというシンセエンジン(無料です。)でプラグインとして使用できるようになっています。他のFrozenPlain社のリリースしているMirageライブラリも全てこのMirageエンジンでロードするのでこの製品に限らず、FrozenPlainの該当製品に関する内容でもあります。他のMirageライブラリについても音色以外は内容が共通するわけですね。イメージとしてはUJAMのUsynthなどの使い勝手をイメ―ジしてみると良いでしょう。(あちらはプリセットごとにパラメータが異なるものが用意されますが。)ここでは製品固有のライブラリの音色について触れる前にエンジンについてまず見ていきましょう。
ちなみにMirageは一般的なサンプラーではなくサンプル自体はクローズドフォーマットのmdataファイルとして格納されているのでサンプルの調整はサンプラーと同様できますが、サンプルを抽出するなどは(録音などの操作を除いては)出来ないようになっています。また、Mirage自体はサンプラーのように持っているサンプルをロードするなどが出来ないので完全にバーチャルインストゥルメントと考えて間違いないと思います。ちなみにエンジンのフリーアップデートもあり、互換性は保たれるとのこと。
エンジンを見ていきましょう。エンジンは3レイヤーとなっていて音色プリセット(サンプルです。)をそれぞれのレイヤーで選択することが出来ます。プルダウンで種類ごとにアコーディオン形式で分類されています。因みに少し面白いのは音色ごとに右側に表示される!マークを押すとサンプルの情報が表示されます。これは結構な親切設計だと思います。
それぞれのレイヤーでピッチ、デチューン、パン、ボリューム、サンプルのトリムやADSRによるボリュームエンベロープ、再生方向の指定などおおよそサンプラーではおなじみの設定ができます。サンプル自体のリバースボタンがあるのもなかなか便利。
また、ラック形式のエフェクトセクションが地味ながら便利。1-10までのエフェクトが 用意されていて、文字左のスイッチで好きなエフェクトだけ下のラックにロードします。ラックということでモジュールつかんで位置を移動させ、エフェクトチェインを並び替えることが出来るわけですね。
ディストーション、ビットクラッシュ、コーラス、ステレオワイドナーなどの内蔵エフェクトがありますが、それをレイヤーではなくマスターの段階でかけることができます。コンボリューションリバーブはその中でも注目できるエフェクト。現実空間のIRだけでなく超自然的なIRデータも用意されているのでサウンドの特性を大きく変えることが出来るようになっています。コンボリューションリバーブやビットクラッシュは特にサンプルの特性と相性が良いようで非常にユニークでクリエイティブな質感のサウンドを作ることが出来るようになっていると感じます。
インストルメント関してはレイヤー レベルとマスター レベルの両方の音量を MIDI ベロシティで制御できます。サスティン ペダル (MIDI CC 64) も完全にサポートされているため、フット ペダルを使用してノートをサステインペダルで保持できます。MIDI Learnも対応。
また、マルチレイヤーのプリセット(音色全体のプリセット)がかなり充実しています。Mirageエンジンではジャンルごとにしっかりデータベースになっているのでわかりやすいところ。検索窓付きです。
FrozenPlain「Cinematic Atmosphere Toolkit」の音色プリセット
ここでは多数あるプリセットの中からいくつかの音色プリセットをほんの少しにはなりますが抜粋してみました。エピックなものからホラー系のテンションのかかるサウンド、パーカッション、アンビエント、キーまで多岐にわたります。
オーソドックスなアンビエントパッドやドローン風のものもありますが。筆者としては高域の美しいパッド風の音色が大変好印象です。一通りプリセットを確認してみたところこのタイプのバリエーションがいくつもあります。
パーカッシブで印象派を思わせるプリセット。
オーソドックスながらも個性も感じられる音色も充実。
評価
まずエンジンに関して言えばメーカーに言及があるように軽量性も重視しているとのことでLFOに関してはエフェクトラックのモジュレーションなどは出来ないようになっています。若干物足りないという人がいるかもしれませんが、割と元のサンプル自体の個性や主張があるのでLFOで複雑にモジュレートする必要性がない場面も多いかもしれません。これは今後のアップデートで変更される可能性もありますが、上述の背景を踏まえるとあえてそのようにシンプルにしているのではないかと感じます。
次に固有のライブラリに関してまとめていきましょう。FrozenPlain「Cinematic Atmosphere Toolkit」のサウンドは思った以上に汎用性の高い音色が備わっていて前衛に偏り過ぎることもなくオーソドックスなキーのサウンドやプラック等も多く収録されているのでシネマティックに便利というだけでなく、ポピュラーな電子音楽やポピュラーミュージックにも使いやすいものも多いと感じます。また、それだけに飽き足らず、耳に馴染みのある音色でも一ひねりされているものが多いのでセンスを感じるプリセットが多い。特にこれはFrozen Plainの他の製品にも共通する傾向だと思うのですが、高域の処理が非常にうまく、シマ―エフェクトを思わせるような煌びやかで滑らかな音色が非常に美しいと思います。ストリングス風の音色等。(FrozenPlainのユーザーは割とこのタイプの音色を好んでファンになっている人が多いのではないでしょうか。)これは個人的な好みの問題もありますが、低域が膨らんだ厚いアンビエントサウンドだけでなく、このような煌びやかなパッド風サウンドがしっかり入っていると様々なジャンルに使いやすいと感じます。ノイズといったサウンドでもものによっては明確に12音を感じさせる音色もありアトーナルなサウンドだけでなくトーナルなサウンドが十分用意されているので純粋なパート楽器として使用しやすくなっているというのが印象的なところでした。音域はフルレンジですが、サンプルの素材によっては(他社のサンプルライブラリもそういったものがありますが)再生するのに適したピッチがやや限定的なものもあります。(鳴らせるけれど使う上では現実的ではないかもというピッチがあります。)もちろんノイズミュージックが好きな人にはたまらないノイズのプリセットも多数あり、通常の音色に少しひねりとパンチを加えたサウンドにしたい人からアンビエントやノイズの世界を創りたいという人まで幅広いニーズを網羅しているバランスが良いライブラリだと思います。一番の評価点は音色のセンスの良さに尽きると思いますね。
セール情報
セール頻度は少ない方だと思います。年1-2回程度でしょうか。