【Review】Mario Nieto World「Harmony Bloom」レビュー(MIDIジェネレータープラグイン・機能と使い方・評価)
製品情報
Mario Nietoが手がけたHarmony Bloomは、ポリリズムパターンと見事なビジュアルをシームレスに統合する画期的なMIDIジェネレーターです。VST3、AUプラグイン、スタンドアロンアプリとしてWindowsおよびMacOSと互換性があり、互換性のあるデバイスへのMIDIデータ送信を可能にし、その視覚的体験によって強化することで、音楽の創造性に革命をもたらします。
一般的なMIDIジェネレーターとは異なり、Harmony Bloomは独自の機能を提供します。スタンドアローン版は、5つのサウンドを選択可能で、使い勝手の良さを追求しています。メロディの一貫性を保つための57のオプションを備えたスケールセレクターや、シーケンスをカスタマイズするためのさまざまなオフセットコントロールなど、音楽作成のための包括的なコントロールセットを備えています。
ソフトウェアのビジュアル コンポーネントであるシーケンサー ビジュアライザーは、ノートの複雑なパターンを表示し、クリエイティブなプロセスを強化します。MIDIキャプチャーやエクスポートなどの主要機能により、シーケンスのデジタルオーディオワークステーションへの統合が簡素化され、Harmony Bloomは音楽制作のための貴重なツールになります。
その適応性はコアの強みであり、「Use Input Notes」や「Root Mode」などの機能により、ダイナミックな音楽応答と一貫性を確保します。「グローバルランダム化」は、技術的なコントロールと芸術的な自由の融合を提供し、探索的な創造性を可能にします。
Harmony Bloomはユーザーエクスペリエンスを重視しており、簡単なインストール、直感的なプリセット管理、購入ごとに最大3回のアクティベーションを提供します。アクセシビリティと柔軟性に重点を置いているため、新しい音楽の次元を探求したいミュージシャン、プロデューサー、作曲家にとって理想的な選択肢となっています。
本質的に、Harmony Bloomは単なるMIDIジェネレーターではなく、音楽の探求と創造のための包括的なツールです。ポリリズムの生成、視覚的なフィードバック、詳細な音楽コントロールの組み合わせにより、クリエイティブでプロフェッショナルなアプリケーション向けの傑出した楽器として位置付けられています。
ハーモニーブルームを手に入れるべき理由
インタラクティブシーケンサー:タクティカルノート発動の8ポイント
カスタムタイミングコントロール:ダイナミックコンポジションのノートを加速または減速
ハーモニック・アライメント:一貫した音楽性のための57のスケールとモード
MIDI CCの柔軟性:指先でパラメーターをコントロール
共有可能なプリセット:創造性を簡単に保存および交換
ユニバーサル互換性:主要なDAWとフォーマットで動作します
合理化されたMIDIエクスポート:音楽制作ワークフローへの簡単な統合
トリガーバーは、異なる独立したMIDIチャンネルを介して送信されるようにマッピングできます。さらに、各トリガーバーのオクターブを個別に選択することも可能です。
インターフェイスを好きなようにカスタマイズし、要素、スパイラル、または背景の色を制御します。
詳しい製品情報は製品ページでも確認してみてください。
Harmony Bloom機能と使い方
恐らく製品のディスクリプションを読んでもこのプラグインについてわかるようで良く分からないという人も多いかと思うのでここで簡単に要約してみます。まずこのプラグインはスタンドアロンとプラグインの2種類が用意されたMIDIジェネレーターです。スタンドアロンがあることで外部と接続したりといろいろ活用の幅が広いプラグインでもあるのですが、おおよそはどちらも同じですのでここではプラグインに絞ってまとめていきます。まず使い方としては。トラックに立ち上げて、鳴らしたい音源にルーティングしてこのプラグインのMIDIを送信することが出来るので接続します。基本的にはランダマイズにより生成されるタイプのプラグインです。MIDIジェネレーターというとこの方式をとっているプラグインが多く、違いが気になるところだと思います。このプラグインはランダマイズではなくユーザーが指定した規則に従って配置されます。
このプラグインのユニークなところは何かというとリズムと拍に関して柔軟な操作ができるということ。さらにリアルタイムコントロールに対応しているため、まさに演奏するように移り変わるフレーズを作ることができる点。例えて言うならばリアルタイムでミニマルミュージック(芸術音楽文脈の方を想像してみてください)を構成することができるプラグインということもできるでしょう。
コードやスケール設定に対応しているので鳴らす音を絞ることが可能です。デュレーションは音の長さ、確率で時々音を省くように設定することが出来るようになっております。ここまでは割と標準的。因みに画面下の設定で使用するノートのピッチとヴェロシティの範囲を設定できるのでかなり限定的に音を生成できるようになっています。そしてここからが面白いのが、各ノートのリズムの調整。ノートはデフォルトの設定だと直線上に並び回転するわけで周期的にすべての音が同じタイミングで鳴るわけですが、オフセットでタイミングをずらすことで、ノートをばらけさせて鳴らすことが出来、フレーズが出来るわけです。グローバルオフセットは全体をずらすオフセットで所謂サンプラーと同様の一般的なオフセット。Qオフセットはクオンタイズでノートを指定した拍子になるように直線を多角形に折り曲げて均等配列します。5拍子なら5つの玉をちょうてんした正五角形のような見た目になります。4拍子や8拍子など特定の拍子に合わせることが出来ます。Fオフセットはノートごとの発音タイミングを均等にばらけさせます。アルペジオのように。大きくずらすと周期を超えて複雑なリズムが生まれます。このあたりから少しずつ知覚が難しくなっていきます。Sオフセットあたりから認識が難しくなってきますが中心の玉から円の外側に行くにつれて回転速度を下げたり下げたりする機能。要はノートごとの周期を変えることでポリリズムが生まれるわけです。Eオフセットは弱拍をずらすオフセットでおもにスイングなどに使用するパラメータ。とここまでざっくりと仕組みを説明しましたがあまり難しいことを考えずに要はそれぞれの音の周期をずらして異なる周期のポリリズムを作っていくと考えるのが良いと思います。パラメータを複数いじるとパターンはもはや人間の脳には処理しきれないと思うのである程度方向性を決めたら後は感覚に任せて。
また、なかなか面白いことに8つのトリガーは独立してMIDIルーティングしてトラックに送ることが出来ます。それぞれのチャンネルのトランスポーズもできるので可能性が広がります。
そしてこれは極めつけともいえますが、リアルタイムのMIDI入力にも対応しています。右上の→ボタン(これをオンにすると入力信号の実際のピッチ情報が反映されます。スケール情報は無効になります。オフの場合はスケールに基づくトランスポーズになります。どちらも使いどころがありますね。)と右下の鍵盤ボタンでオンにします。これはどういうことかというと、単音やコードをリアルタイムで入力するとその音を自動的に配列して音を並び替えられるようになっています。単音の場合は同音でリズムジェネレーターになります。つまり、コードを入力することで生成されるパターンをリアルタイムでコードを変えることもできてしまうという。これは革新的ともいえる素晴らしい機能。
後はループの回転を逆回りにするスイッチもあります。
評価
このプラグインは作曲支援や時短のプラグインではありません。どちらかというと楽器に近く、実験しながら制作するためのジェネレーターです。実験とはいうもののスケールや使用する音域、拍等の音楽のコアとなる要素を絞れるので適当に生成されるプラグインとも異なります。むしろパラメータを数的に絞れるので、AI生成系のMIDIジェネレーター以上に精度良く思ったものが作りやすいということもあるかもしれません。上述の通り、極めてパラメータを含め幾何学的な設計になっていることもわかるように機械的に管理されたリズムの組み合わせから音楽的なフレーズパターンを生成することが出来ることからどちらかというと電子音楽のテクスチャやシネマティック、アルペジオなどのフレーズに適していて、純粋なメロディメーカーやインスピレーションとして使うのも良いですが、どちらかというと所謂メロディックなものを探すというよりも幾何学的なフレーズパターンの美しさが光るプラグインで、筆者もMIDIジェネレーターは様々なメーカーの製品を使ってみていますが、構造化されたリズムに焦点化したMIDIジェネレーターとしてはなかなか新鮮です。まさにコンピューターミュージックといったところ。数学的な美しさともいえますが、複雑なパターンの組み合わせの中でメロディックなものが出てくるのがおもしろいところです。特にSオフセットを少し加えながら、他のオフセットを少々加えてスローテンポにした時に非常に美しいメロディを作ることが出来ます。他のAI駆動のジェネレーターも多数試してみていますが、逆説的ではありますが最も人間的なメロディが出来ていると思います。
新鮮といってもお気づきの方もいるかと思いますが、この作曲プロセス、初期のライヒの実験音楽やテープミュージックなどにも通底するものがあるのですね。スピードをオフセットすること周期がずれていき元に戻る、あたかもピアノフェーズを思わせるようなエフェクトもできるわけです。そのため実験音楽的なミニマルのエッセンスを取り入れたい場合にはうってつけです。そう考えるとこのプラグインが面白いだけでなくこのプラグインの根底にあるコンセプト自体に魅力があるともいえます。コードトーンとなるので響きが濁りにくい(もちろん音楽理論ではおなじみですが偶発的な音程や配置によっては濁ることもありえます。)というのも実はポピュラーなシーンで使いやすいというところでもあります。
シンセフレーズなど複雑に絡み合うものを作るのに適しているかと思います。総じてMIDIアルペジエータとしては数学的な設計をベースにしていることもあり、非常にユニークなパターンを作ることができる刺激的なプラグインだと思いますね。
セール情報・最安値
最安値は12ドルです。