【Review】Techivation「M-Compressor」レビュー(入力信号の輪郭に応じて変化するスペクトラルスレッショルドによる動的処理を行う最先端のスペクトラルコンプレッサー・機能と使い方・評価・セール情報)


【Review】Techivation「M-compressor」レビュー(入力信号の輪郭に応じて変化するスペクトラルスレッショルドによる動的処理を行う最先端のスペクトラルコンプレッサー・機能と使い方・評価)


製品情報


M-Compressor は、下方圧縮と上方圧縮の両方を提供する高度なスペクトル オーディオ コンプレッサーで、あらゆるサウンドに対して歪みやアーティファクトのないダイナミックな処理を提供します。 ダイナミックスレッショルドを備えており、低周波数を過度に圧縮したり高周波数を過小圧縮したりすることなく、スペクトル全体でバランスのとれた圧縮を保証します。





動的閾値を備えたスペクトルオーディオ圧縮
通常のコンプレッサーは、コンプレッサーのスレッショルドとの関係に基づいて全体の信号レベルを調整します。 M-Compressor は、全体的な信号レベルではなく、信号スペクトルを処理します。 個々の周波数は、スペクトルしきい値曲線に対するレベルに基づいて圧縮されます。


スペクトルしきい値により、M-Compressor がアーティファクトなしで動作できるようになります。 スペクトルしきい値の形状は入力信号のスペクトル輪郭によって決定され、入力に応じて動的に変化します。 これにより、通常のコンプレッサーでよくある低域の過剰な圧縮や高域の圧縮不足を招くことなく、スペクトル全体でバランスのとれた圧縮が保証されます。 また、入力信号の元のトーンバランスも維持されます。

下方向と上方向の両方の圧縮を指先で操作可能
従来の下向き圧縮に加えて、M-Compressor は上向き圧縮のスペクトルも提供します。 下方圧縮では、信号レベルがスレッショルドを超えると減少します。 上方圧縮は逆に機能します。信号レベルがスレッショルドを下回るとブーストされます。 これは、信号のアンビエンスを引き出したり、よりアグレッシブなサウンドの圧縮を実現したい場合に特に便利です。



これまでにない方法でサウンドのトーンバランスを形成します
音色バランスの変更が必要な場合、プラグインはスペクトルしきい値のチルト コントロールも提供します。 これにより、スペクトルの一部にさらに多くの圧縮を適用し、スペクトルの残りの部分の圧縮を少なくすることができます。
その他製品の詳細は製品ページを確認してみてください。
M-Compressor

機能と使い方

Techivation「M-compressor」はスペクトラルコンプレッサーと称されるコンプレッサーで通常のコンプレッサーと異なる最大のポイントは信号を圧縮するスレッショルドが全体の信号のインプット量に対して直線で境界(それよりも上に出た際に作動する)を設けるのではなく、リアルタイムで入力される信号のスペクトラム周波数の輪郭に応じてスレッショルドの形状が変化して(曲線になります)圧縮が行われるという点にあります。つまり、入力に応じて動的に変化します。 これは通常のコンプレッサーとどう違うかというと通常のコンプレッサーでは生じうるアーティファクトの問題だけでなく、低域の過剰に圧縮してしまうことや高域があまり圧縮されないといったケースを避けることができ、スペクトル全体でバランスのとれた圧縮ができるということです。 また、入力信号の元々のトーンバランスも維持されるようになるという点も重要です。また、アナライザーが搭載されているのはこれまでのTechivation製品との大きな違いとなります。また、アップワードコンプレッション(上向きの圧縮、つまり通常のコンプレッションがスレッショルドを基準として圧縮するのに対し、持ち上げます)が用意されているのもポイント。つまり、信号レベルがスレッショルドを下回るとブーストされます。例えば、入力信号のアンビエンスを引き出したり、アグレッシブなサウンドになるように圧縮したい場合便利です。

ここでは機能を見ていきたいと思います。通常のコンプレッサーと同様の機能の名称がみられるので一見の際に理解すること自体はさほど難しくありません。スレッショルドはダウンワード(通常の下に圧縮するスレッショルド)とアップワードコンプレッションがそれぞれ色分けされており、スライダーを上げ下げできます。色がついている部分を動かすとそれぞれの色のスライダーが動くだけでなく、その隙間を上げ下げすると二つが連動して上下します。色がついている部分を動かすことでも両者連動した上下移動をするためのリンクボタンが用意されています。

レシオは非常にわかりやすいと思います。上向き下向きに対して圧縮する割合を設定します。圧縮の速度も通常のコンプレッサーではおなじみの表現で理解しやすいなじみやすさがあります。キャラクターは少し説明が必要かもしれません。インテンシティパラメータはいわゆるニーをコントロールするパラメータであり、ソフトニー、ハードニーといったように緩やかにコンプレッションするのか、あるいは値を上げて劇的にコンプレッションが行われるのかコントロールします。パンチはいわゆるパンチノブ。値を高くすることでトランジェントが強調されます。

オートゲインはアップワード、ダウンワードコンプレッション処理が行われた後のコンプレッサーのゲインレベルの変化したインプットと通過以前のインプットのゲインマッチ機能。追従するので、適切なゲイン値を探るためのものであり、適切なメイクアップゲイン値が見つかったら切るのが基本になります。



次にアナライザーの見方です。親切な設計なことにアナライザーの色分けがしっかり上部に記載されているので迷うことがありません。こうしたユーザーの実際の現場での使用を想定した合理的な設計は非常に好感が持てます。インプットが白、ダウンワードコンプレッションのスレッショルドが金(薄いベージュにも見えるかもしれません)アップワードコンプレッションのスレッショルドが青、白のインプットに対してゲインリダクションされたものが赤、アップワードコンプレッションが加わりブーストされると緑の線が現れます。Diffのメーターではゲインリダクションでインプットが-になった場合は赤で表示、アップワードコンプレッションが加わり+になった時は緑になるので見間違えることがありません。こうしたアップワード・ダウンワードコンプレッションの色分けはスレッショルドやレシオでも統一されているので非常に良く考えられたUIであると評価できます。


Tiltはスペクトルの低域から高域にわたる圧縮バランスに傾斜をつけることができる機能。Tilt Centreを設定するとシーソーの中心軸が十字のポイントで移動するので周波数の中心軸を設定して、Tilt値を変化させるとそれに対応して、直線が傾きます。これは低域高域のどちらかをより多く圧縮したい場合等、バランスコントロールに使用することでトーンバランスを微調整することができる機能。
サイドチェーンにも対応しており、DAWの通常のサイドチェーン信号をこのプラグインに送り、Ext. Sidechainをオンにすることでスレッショルドがサイドチェーン信号による量に応じて動くようになります。注意したいのが、サイドチェーン信号のスペクトラムの形状とは無関係であり、スペクトラルスレッショルドの形状はインサートしているトラックの入力信号の輪郭によります。つまり、サイドチェーンはメインの入力信号の輪郭に基づくスペクトラルスレッショルドを形はそのままで上下にプッシュするといったイメージです。サイドチェーンのハイパスフィルタも用意されているのでサイドチェーンの感度をコントロールできます。

その他、diffボタンではコンプレッションによるエフェクト処理部分のみを聴く(インプットアプトプットの差分)機能やサイドチェーン信号のみを聴くボタンも用意されています。
Mixノブが用意されているのでパラレルコンプレッション処理も可能。(処理された信号と元々の信号を並列でミックスするということ。)ステレオリンクはLRの信号を独立して(デュアルモノラル)コンプレッションを行うか、リンクさせて圧縮するか度合いをコントロールdキル機能です。プリセットも充実していて楽器や用途ごとやマスタリング設定等も用意されています。




評価

Techivation「M-Compressor」において最も評価できる観点の一つは入力信号に対して「忠実な」コンプレッション処理。スレッショルドやレシオを少し大きめに設定したとしてもボーカルトラックのオーバーコンプレッションで生じがちな低域の過剰な強調などをはじめとした従来のコンプレッサーのようなキャラクターの変化がさほど生じません。(例えばボーカルやスピーチの詰まったような塊のような(言葉で表現することは難しいですが)感触にならずに元の質量感が維持されるようなといったところでしょうか。)これはなかなか驚かされるところです。IntensityやPunchでも顕著で、歪むような(あるいは歪身の効果をもたらすような)処理ではなく、非常に繊細なコントロールです。それらを組み合わせることでサウンドを劇的にすることもできますが、あくまで繊細でナチュラルな処理でありパンチのニュアンスを強引に詰め込むようなプラグインではありません。Tiltコントロールも用意されていることもあり、どちらかというとコンプレッションによる原型維持や微調整に最適化されたプラグインであり、まさしくマスタリングにも使用できる精度になっています。アナライザーもわかりやすく機能の基本操作は理解しやすいので、幅広い多くの人が使いやすいと感じるようなプラグインにはなっておりますが、全てのコントロールをマスターするのは少し時間がかかる人もいるかもしれません。筆者は通常のコンプレッサーと挙動が異なることもありアップワードコンプレッションのより適切な設定が少し悩みます。(プリセット設定によってはアップワードコントロールを設定していないものもあるように設計上はマストで使用する機能ではないようですが。)しかし、ブーストされている周波数の部分だけ緑色の直線で見られるだけでなく、diffもあるので信号のどの部分だけ処理されるのかを聴いて設定できるため、割と追い込めるのが非常に大きな救いです。上下両方の処理が行われるので通常のコンプレッサーと比べると少し注意したいのは、アップワードコンプレッションは持ち上げることで持ち上がってほしくない成分がこっそりと持ち上がる可能性があるのでしっかりモニターすることは必須です。また、ナレーション等の処理に使っても活躍できそうな気がしますね。
筆者もTechivationの製品をいくつか使用していますが、Mシリーズと共通するメーカーの特徴ともいえる非常に個性的な質感と処理が行われます。(棘が磨かれて丸みを帯びた凹凸は維持されているもののつるつるとした質感といいますか、これは非常に顕著な特徴なので機能や性能とは別にして製品を評価する上で好みの問題にかかわりそうな観点だと思います。)
要望をもしいうならばTiltのシーソーの中心軸に該当するTilt Centre位置がアナライザー上で操作できたら便利そうだと思いました。

また、無料試用もできるのも良心的だと思います。自分の環境に合う合わないが導入前に精査できるので確認してみてください。
M-Compressor


セール情報

Techivationの製品はここ数年のセール状況を見ているとリリース時にやや大きめの割引率になる傾向が大きいように思われます。
また製品所有に応じてさらに割引された価格で入手することができるので所有者の方はログインしてみること該当している場合割引価格が表示されます。