【Review】Techivation「T-Puncher」レビュー(自然で音楽的な処理ができるトランジェントシェイパープラグイン・使い方・無料版についての補足)

【Review】Techivation「T-Puncher」レビュー(自然で音楽的な処理ができるトランジェントシェイパープラグイン・使い方)

製品情報

Techivation T-Puncherは、自然で音楽的なサウンドを維持しながらパンチとインパクトをコントロールするために設計された革新的なトランジェントシェイパープラグインです。キックドラムにもっとアタックを与えたいですか? スネアはミックスを切り裂きながらも、ウォームでフルボディーなサウンドにしたいですか?また、弦楽器のディテールを引き出すために、激しいトランジェントを丸くする必要がありますか?T-Puncherを使えば、個々のサウンドでもミックス全体でも、繊細さを加えることも、ドラマチックな効果を得ることも、簡単にできます。シンプルなインターフェース、優れた音質、多彩な機能を備えたTechivation T-Puncherは、プロのサウンドエンジニアや、あらゆるジャンルの音楽プロデューサーにとって、パワフルで不可欠なツールです。



引用元:T-Puncher  

無料製品Techivation「T-Puncher FREE」について(T-Puncherとの違い・簡単な比較)

Techivation「T-Puncher FREE」がリリースされており、無料で配布されています。


こちらはTechivation「T-Puncher」の画面と比較してみればわかるように、画面下部の機能が全てロックされている機能制限版となっていて、サウンドにパンチを与えるPunchinessノブのみのワンノブプラグインとなっています。実際のところロックされているところはデフォルト値でロックされているので、汎用性のある設定でロックされているといったところでしょうか。ワンノブプラグインとしてみれば、なかなか使えるプラグインだと思います。

機能紹介

Techivation「T-Puncher」は自然で音楽的な処理ができるように意図されて設計されたトランジェントシェイパープラグインです。Techivationのプラグインは結構前提の知識や情報がないとパラメータの理解が難しいプラグインも多い印象ですが、T-Puncherはわかりやすいかもしれません。

T-Puncherの中央にあるノブはパンチを加えるノブ。エフェクトの量を調整するノブともいえます。第一倍音のハーモニクスが付与されます。モードはハードモードとソフトモードの2種類が用意されています。そして、周波数のスライダーによって、特定の周波数帯域のみにエフェクトを適用することができるようになっています。周波数帯域を狭めて処理をすると非常にトリッキーなサウンドシェイピングをすることができます。



Smoother機能はやや説明が必要になります。
T-Puncherの "Smoother "機能は、パンチを加えたり、減らしたりする選択した周波数帯域に、独自のサチュレーションを加えることができるものです。これはアグレッシブなトランジェントを丸くするのに最適な機能ともいえます。繊細にするか、よりアグレッシブにするかを選択でき、0~100%の間で設定できます。ざっと確認してみると倍音構成が大きく変化し、高次倍音が新たに付与されます。
トランジェントシェイパーということでアタック・コントロールが用意されています。Attackノブは、サウンドのトランジェントやピークをミックスの前面に出したり、ミックスの奥に押し込んだりすることができます。量を増やすと音が前面に出るようになります。こちらは倍音の処理とともに(単に加算しているのではなく、倍音成分が減少するなど複雑な処理が行われているようです)ゲイン量にも変化があります。
またMS処理のオプションが用意されています。プルダウンになっており通常のステレオ処理(stereo)の他、ミッド、サイドのみに処理を加えるオプションが用意されています。



ソロボタン(solo) は指定した周波数帯域の処理されたオーディオ信号の部分だけを聴くことができる機能です。これは周波数を限定して処理をした時に生じている効果をチェックすることができる便利な機能。

ソフト・クリップボタンはアグレッシブな設定を選択したときに、音が歪むのを防ぐことができ、優しく滑らかにする機能。
ステレオリンク T-PuncherのStereo Linkオプションはオンにすることで、LRの内最も音量が大きいチャンネル(左または右)で参照されて、両方のチャンネルに適用されます。
またプリセットはありません。


評価・まとめ

Techivationの製品の中で操作としては非常にわかりやすいプラグインといえます。自然で音楽的ということですが、筆者の見解ではどう頑張っても歪まないプラグイン(クリップは考慮に論外として)として評価することができます。また、ローを膨らませても音が不明瞭になりもっさりすることもなく、また音痩せもしないといった印象です。どうにかしてそのような状況になるように設定をいじってみたもののそのような問題とはほぼ無縁のプラグインなようです。
値を最大にして極端な設定をしたとしても音は歪みを発生することなく、音はソリッドな状態を維持します。例えるならば、プラスティックのような感触で解像度も非常に高い。また、フィルターを高域のみに限定することで、爪のあたったかのようなアタックを作ることもできる等、シンセや楽器のサウンドデザインツールとしても非常に有用です。周波数帯域を狭い範囲に限定することで、音を積極的に加工できるのが面白い。個人的には注目の使い方です。

パンチを加えるといいますが、ディストーションの効いた飽和したにじむようなパンチはこのプラグインではあまり期待するものではありません。(その類のプラグインは他にも無数にあると思います。)むしろ、音像を解像度を保ったままズームしたかのような有機的な質量感と素材感をもたらすのに適しています。(逆に少しひねくれた言い方をするならば、非常に「洗練されている」ので音が上手くまとまりすぎているなあと思うところはあります。優等生な感じといいますか、所謂音を野蛮に汚してパンチを出すにはあまり適していないと思いますね。なお平滑化され過ぎて音のトランジェントが潰れているというわけではないので安心してください。)ターゲットとする周波数帯域を限定できるので低音強化から高音処理まで汎用性の非常に高いプラグインといえます。
逆に使っていて気になったこととしては、周波数帯域の指定した範囲をそのままスライドできればなあと思ったりはします。総じていえば、使いやすさの割にできることが多く、また、前提となる知識が要求されるようなプラグインではなく多くの人にとって直感的です。感覚的に操作ができるプラグインであり、多くの人にとってそのニーズがありそうなプラグインの一つだと思います。プラックを聴かせたいときや、シンセサウンドの音の質量感と重量を上げたい時。

先述の無料版の他無料トライアルもダウンロードできるようになっているので、ここまで論じてきた機能はトライアルの方で確認することもできます。