【Review】Sonuscore「The Orchestra Complete 3」 レビュー(オーケストラ音源、アップデートによる新機能等)
Sonuscoreが史上最大のアップデートと掲げているのでこの度アップデートしてみることにしました。Sonuscore「The Orchestra Complete 3」はBest Service社との共同開発で設計されたThe Orchestraに加え、WOODS OF THE WILD、Horn of Hell、Winter of Stringsの製品が収録され統合された(単独パッチで使用することもできますが、The Orchestra Complete パッチから音色にアクセスすることができます。)フラグシップオーケストラ音源です。
メーカー情報
「 The Orchestra 」製品ファミリーのフラッグシップとしての「 The Orchestra Complete 3 」は、オリジナルの 80 人編成のオーケストラの迫力に、追加のアーティキュレーションと強力な機能を組み合わせたものです。Strings of Winterと Horns Of Hellだけでなく、Woods of The Wildも含まれるようになりました。これらはすべて、クリエイティブなアンサンブル エンジン内で組み合わされています。この革新的なオールインワン パッケージで、シンフォニック オーケストラのサウンドをすぐに体験できます。画期的なアンサンブル エンジンを使用して、アイデアを音楽に変換するための非常に簡単な方法を作成しました。すぐにプレイ可能。完全にカスタマイズ可能。驚くほどシンプル。
特徴
- 3 つの独立したアルペジエーターと2 つのベロシティ エンベロープを割り当てて、鮮やかでパワフルなオーケストラ ボイシングを作成できます。
- 新しいシーケンサー デザイナーを使用して、独自のパターンを作成およびカスタマイズします。
- 独立したスロットに最大 5 つの異なる楽器をロードし、一緒に演奏します。
- 各スロットは、5 つの異なるモジュールのいずれかに割り当てることができます。
- パーカッションをアルペジエーターに割り当てて、脈動するリズムを作成します。
- 新しい改善されたボイシングの選択。 どの楽器がコードのどの音符を演奏するかを割り当てて、よりリアルなアンサンブル サウンドを実現します。または、あらかじめ用意された 90 以上のヴォイシングから選択することもできます。
The Orchestra Complete 3のアップデートによる新機能
WOODS OF THE WILDの追加
トリプルタン、リップ、トリルなどの印象的なアーティキュレーションを備えた完全かつ拡張された木管セクションに焦点を当てたWOODS OF THE WILDは、木管楽器だけが提供できる謎と感情の要素を追加します。拡張には、マレットやその他の木製のドラムとパーカッションも含まれます。
木管楽器を中心に構成されたライブラリ、WOODS OF THE WILDが追加されました。今回のアップデートで、この追加が実は結構大きく、パーカッション系が追加されたこともかなりうれしいことで、マレットや鉄琴、木製楽器も収録されているので、オーケストレーションを彩る重要な楽器が一通りそろいこれだけでも対応できる守備範囲が格段に広がったといえます。音色も汎用性が高そうなものがそろっております。
- フルート 1&2
- ピッコロフルート
- アルトフルート
- オーボエ1&2
- イングリッシュホルン
- クラリネット1&2
- バスクラリネット
- ファゴット1&2
- コントラバスーン
- ビッグパーカッション(太鼓、トムアンサンブル、グランカッサ、タムタム、スネアドラム、ピアッティ、サスペンドシンバル)
- パーカッション(チェレスタ、クロタレス、マリンバフォン、ビブラフォン、シロフォン)
- ハンドパーカッション(カスタネット、クラベス、ロッド、シェイカー、スティック、ウッドブロック、フィンガーシンバル、マークツリー、タンバリン、トライアングル)
Sequence Designer機能
これまでも豊富なアルペジオパターンから選択可能なシーケンサーや、
自由に線描できるエンベロープによりフレーズに微妙なニュアンスを指示して演奏することができたのですが、
THE ORCHESTRA COMPLETE 3 では、従来のシーケンサーやエンベロープに加えて、独自の音楽パターンを作成できるようになりました。これらのシーケンスは個別に編集できるため、より詳細な構成を自由に作成できるようになりました。
シーケンサーに表示されている数字は0をコードのルートとして、演奏されたノートを下から上へ並べたもので、最も低いノートは値0、2番目に低いノートは値1、といった具合です。例えばCメジャーを演奏する場合、構成音はC E Gとなるため、シーケンスカスタマイザー内でのピッチの分布は次のようになります。0 = C1、1 = E1、2 = G1、3 = C2、4 = E2、5 = G2、-1 = G0、-2 = E0、-3 = C0となります。そのため、入力したコードの構成音の中から正確にフレーズを創り出すことができるという革新的な機能。アルペジエータ―のステップはヴェロシティです。
また、作成したフレーズをMIDIエクスポートする機能も備えているのでさらに細かくフレーズを作ることができます。
ピュア パフォーマンス レガート機能
また、アーティキュレーションの発音に関する設計が一新されたようで、キースイッチを使用しなくともレガートとスタッカートのアーティキュレーションを区別できるようになっています。そのため、さほど神経質にならなくても、ある程度の調整で一定の適切な表情を簡単につけられるようになっています。
完全に再設計されたパフォーマンス レガート エンジンを導入できることを誇りに思います。これにより、エンジンはキースイッチを必要とせずに両方のアーティキュレーションを区別できるため、高速の真のレガートとスタッカートの両方を問題なく演奏できます。
メイン ページ: ボイシングの選択
これも今回の重要なアップデートの一つ。Ensemble NKI が更新され、新しく改善されたボイシングの選択が追加されました。(これはアルペジオではなく、コード限定です。)
このようにボイシングの中でパートがどこに位置するかをスロットごとに設定します。つまり、どの楽器がコードのどの音符を演奏するかを割り当てて、よりリアルなアンサンブル サウンドを実現できます。また、 90 以上のあらかじめ用意されたボイシングプリセットが用意されているので、それらから選択することもできます。
その他、新たに追加のプリセットとマルチインストゥルメントが用意されています。プリセットは総計700以上にも及びます。
また、The Orchestraで注目したいのはTHE ORCHESTRA COMPLETE 2 で導入された音楽制作者のニーズに応えるような合理的なプリセットブラウザ。音色やリズムの雰囲気、拍子、フレーズの細かさ、テクスチュアのカテゴリ、楽器を元にプリセットを絞り込むことができるデータベース式構造のプリセットブラウザ。複数選択もできるのでほしい音色にすぐありつくことができるというこれだけでも評価の上がる革新的な機能。また、様々なフレーズのパターンを持ったオーケストラの組み合わせが膨大に用意されているのでこれだけでも大変貴重です。また、カテゴリーとして、通常の重ねたボイシングの音色プリセットとフレーズがついたプリセットを分けて絞り込めるのも煩雑にならなくて良いですね。
カテゴリーの複数選択もできます。さらにうれしいのはそれぞれがさほど大容量でもないので瞬時にプリセットが変えられるということ。オーケストラ音源としては総容量50GBほどのMiroslav Philharmonicでさえマルチパッチはロードに結構時間かかるものもあるので、大きな違いです。
またこれらのプリセットをロードした際に各楽器の音域ごとに異なるマッピングがされるのですが、(例えば低域はコントラバスとファゴット等)楽器の集中した主音域を色分けしてくれているのも見やすい。
また、The Orchestra Complete 3にはホーンに特化したHORNS OF HELLやストリングスのSTRINGS OF WINTERも収録されているので、音色の幅はかなりの広さとなっています。
HORNS OF HELL
HORNS OF HELLは劇的なシーンで使われそうなブラスを収録したライブラリ。ブラスだけでなく、オルガンも用意されています。
THE HORNS OF HELLは、パワフルなホーンセクションを THE ORCHESTRA のダイナミクスに詰め込みます。65 の表現力豊かなブラス アーティキュレーション、120 の信じられないほど強力なプリセット、充実した大規模なオルガン ライブラリ、そして非常に悪魔的な Evil Brass を備えた、真に感じられるように作られています。
アーティキュレーションは以下のものが用意されています。所謂咆哮するブラスといった映画でもおなじみの音色が既に用意されているので、使いやすさがあります。とにかくプリセットが多いので音色によってはもっともう少し太さやパワーが欲しいというものがあった印象もありましたが、軽量さと天秤にかければ少し欲張りすぎかもしれません。
また、太鼓系のパーカッションが用意されているのも結構でかいですね。
- トランペットアンサンブル(3人)
- フレンチ・ホルン・アンサンブル(4人)
- テナー・ホルン・アンサンブル(4人)
- トロンボーンアンサンブル (3人)
- ローブラス(2 プレーヤー)
- Evil Brass (4 プレーヤー: ブラス トロンボーン、コントラバス トロンボーン、コントラバス チューバ & チンバッソ)
- 10 のマニュアルと 5 つのペダル登録を備えた15 のオルガン パッチ。収録パイプ数は5000以上!
- 無音程パーカッション(太鼓、トムアンサンブル、グランカッサ、タムタム、スネアドラム、ピアッティ、サスペンドシンバル)
STRINGS OF WINTER
41 人編成のヨーロピアン ストリング オーケストラが演奏するSTRINGS OF WINTER は、素晴らしいユニークなモンゴル国立モリン ホール アンサンブルをフィーチャーし、7 つの異なる楽器にまたがる 60 以上のユニークなアーティキュレーションを含む美的で詩的なタッチをもたらします。
こちらは弦楽オーケストラと、モンゴルの民族楽器馬頭琴を収録したライブラリ。凍てつくようなイメージとのことで、サステイン系やドライなストリングスもしっかり入っています。バルトークピチカート等、地味に貴重なアーティキュレーションも入っています。
こちらで詳しく解説しています。
評価
オーケストラ風のサウンドを作りたい人にとってはかなり優先度の高いオーケストラ音源だと思います。The Orchestra Complete 3へのヴァージョンアップによって木管楽器や金物系のパーカッションも対応し、オーケストレーションのボイシングや楽器ごとの独立したより自由の効くフレーズづくりにまで足を踏み込めるようになったのは革新的だと思います。
史上最大のアップデートというにふさわしいアップデートなのでThe Orchestra Complete 1, 2ユーザーのアップグレードも十分視野に入る大きな刷新かと思われますね。
また、木管楽器やパーカッションまで用意されているので、音色の幅も広く、通常オーケストレーションをするとかなりの時間がかかるものが、すぐにできてしまうのは便利ですね。ポピュラー音楽的なスコアを作成するのには強力なツールとなるでしょう。もちろんフレーズの幅が広がったとはいえシーケンスに依存しているので、ジャズ由来のボイシングではなく、クラシック的な独立したパートのライティングに全て対応できるものではありませんが、部分的に使うという選択肢をとることで大幅にワークフローを効率化することもできるかと思います。特にボイシングの配置を簡単にカスタマイズできるようになったことや、入力した和音の構成音からアルペジオが自在に作れるようになったのはかなり画期的ですね。アルペジエーターが絶対的なピッチではなく、コードの並び順(トップ、セカンド等)をあえて参照することでノンコードトーンは鳴らすことができませんが、わずらわしさを排除しており大変合理的です。また、3パターン用意できるので、大分本格的なアレンジが作れてしまうのは流石といったことですね。また、細かく作ろうと思えば、MIDIエクスポート機能によってフレーズに手を加えられるので作りこみたい人のニーズ対しても応えてくれます。ソロ楽器は新機能として独自の自動アーティキュレーション切り替えによって自然でリアルなフレージングが細かい微調整なしにできるようになったので一層便利になりました。純粋なサンプル数でいえば、他の音源の方が多いものはありますが、用途によってそれらとはすみわけされているように感じられ、作曲家第一主義的なオーケストレーションの柔軟性と無駄のない効率的に設計されているオーケストラライブラリとして申し分なく、十分評価できるはずです。
また、The Orchestraや HORNS OF HELL等各種The OrchestraシリーズからThe Orchestra Completeへとクロスグレード価格で入手できるルートが用意されているのも良心的ですね。